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小説「君の名残を」を号泣する。

悲しい物語は読みたくない。
そう、常々思っている。
繰り返された大大円を見たい、そう思うのに
何故か、読む本読む本、悲しい物語。
泣きたいだけ、泣いてしまう。

今回、涙のスパイラルに引き寄せられて手にとったのは


君の名残を
浅倉卓弥 著
単行本にて読了




トンデモ歴史物って好きなんです。
本当はこんなことが起こってたのかもしれない、と思うと胸熱です。
今作は平家物語を主軸としたトンデモ大河スペクタクル。
史実がどうこう言いだしたら、こんなにつまらない話はないので
薀蓄は言わないように。
私のように歴史に対する知識が浅い方が楽しめるのかもしれない。

或日、嵐の夜に日本から三人の高校生が姿を消した。
この国の、歴史を動かす為にー

映画化して、コピーをつけるならこんな感じかな。

現代の高校生として生きていた友恵、武蔵、志郎の三人が
嵐の夜、何者かに呼ばれるように
落雷と共に800年前の平安末期へとタイムスリップさせられてしまう。
気がつくと、同じ場所にいたはずの三人は離れ離れになっていて
友恵は一人で目を覚まし、木曾義仲という少年に助けられる。
なんとか事実を受け入れ、そこでの生活に馴染み始める友恵。
しかし、義仲が歴史上の人物として教科書に載っていたことを確信し、
そして自分が木曾義仲に寄り添った「巴御前」として生きるのだということを悟る。
武蔵、志郎もやはり、それぞれの場所で歴史を動かした人物として生かされていた。

というのが、あらすじ。

知名度のあるところで、歴史のどのへんかというと
源頼朝、義経、平清盛、このあたり。源平合戦というんでしょうか。
それぞれの出自や事実関係など、史実と照らし合わせると綻びだらけだが
そんなロマンの無いことを言っては台無しなので、先にも言ったように御託は並べない方が良い。
結構な文字数ある作品な為、時代の変遷を追う中盤ではダレたと感じる方もいるかもしれないが
それは、後半に号泣する準備を整える為です。
これで泣かないのなら、泣くまで待てないホトトギス。
号泣必至、ストレス発散に是非読んでみてください。

以下、ネタバレになりますので未読の方は退避



何より、この作品の素晴らしいところは
メインの登場人物たちが、
いずれ、自分が/愛しい人が、死ぬことを知識として知っているということ。
武蔵に至っては、どんな風に死ぬかも知っている。
その身に矢を射られて死ぬということを。
加えて、友恵・武蔵・志郎の三人が
これでもかというくらい、出会わない。
すれ違いさえ、しない。
友恵と武蔵に関しては、タイムスリップ前の生活では
幼馴染であり、剣道仲間でありライバルであり、友達以上恋人未満という関係だった。
離れ離れになってからも、二人は会いたい会いたいと思い続けているのだが
友恵はいつしか巴となり、義仲を愛するようになる。
武蔵は反対に、操を立てているわけでもないが、友恵を忘れられずにいる。
これがまた切ない。
壮大な大河ドラマなので、友恵たちがタイムスリップした冒頭から
集結までにおおよそ三十年くらいは時間経過がある。
その為三人は、時を経るにつれ「現代」で生きていた自分に戻れない、と思うようになる。
武蔵も友恵も、その手を血に染めた時に戻れなくなったということだろう。

タイムスリップものでは定石の、もといた時代に戻るという神隠しエンドが用意されていないところもまた、掴まれる要因かもしれないなあ。
いつか、また落雷があって現代に戻れるんだ、
そして輪廻を経た氷室や義仲と出会って欲しいと願いながら後半の畳み掛ける悲劇を読んでしまう。
映画ロミオ+ジュリエット(ディカプリオとクレア・デインズの)で、お願い間に合って!と願いながらもやっぱりジュリエットが目を覚ました瞬間にロミオが死んじゃうという
あのスパイラルを彷彿とさせる感情。
わかっているのに、わかっているのに、そうなってほしくない!と願わずにはいられない。
それほど役者たちに心を寄り添うことが出来た。
泣いて泣いてむせび泣きました。私。
かなりオススメである。

ということで、「君の名残を」美味しくいただきました。



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謎が謎を呼ぶ秀逸ミステリ「追想五断章」

追想五断章
米澤穂信 著
集英社文庫にて読了



内容(「BOOK」データベースより)

大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語」を探して欲しい、という依頼を受ける。調査
を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり―。五つの物語に秘められた真実とは?青春去りし後の
人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。


アニメ氷菓の原作者である米澤穂信氏の長編読了。
最近のミステリの帯でやたらと目にする「最後の一行で必ず読み返したくなる」という馬鹿げた文句。
私はあの煽り帯、虫酸が走るほど嫌いである。
何故かというと、その帯がつけられる小説で面白いものに当たったことがないからだ。
買っちゃうんだけどさ。
「葉桜の頃に君を想う」然り、「イニシエーション・ラブ」然り、
買って後悔すること、すること。
最後までミスリードさせる為だけのモノが多くて辟易する。
だが、敢えて言う。
追想五断章、最後の一文で瞠目することだろう。

メインとなるのは、ある女性の父親・北里参吾が書いた五篇の「リドルストーリー」。
リドルストーリーとは、作者の言葉を借りれば「読者に委ねて結末を書いていない小説」だ。
要するに、謎を謎としたままエンディングを迎える類の小説。
私は、かなり好き。
残された謎を、自分なりの解釈する行為自体が好きなのだ。
(恩田陸の作品なんかは、いつまでもうんうん唸って考えてしまう)
本書の中の、五篇のリドルストーリーには実は結末が用意されている。
用意されているし、それは読者にも明かされる。
明かされるんだけど、明かされない。
そこらへんの匙加減が非常に上手い。読者を不快にさせない話の運びがある

作中の「アントワープの銃声」が、ある年代以上の読者には
実際に起きた「ロス疑惑」を容易に想像させるのだろうけれど
私は巻末解説を読むまで、その事件そのものを知らなかった。
米澤氏の読者層は比較的若い世代だろうから、ロス疑惑のことなど念頭になく読み進めると思う。
それは本作の菅生芳光と同じ境遇となる。
「記憶に新しい一大事件の容疑者」と「大昔に起こった事件の容疑者らしい」というのでは
緊迫感が違う。

それが、本作の肝でもあるように思う。
容疑者は殺人を犯したのかどうかという緊迫した高揚感ではなく、
地味に地味に興味が湧いてくる仕掛けで
気がつくと頁を捲る手が止まらなくなるのだ。

そして、最後の一文。
とても、とても美しい一文。
これを読めただけで、私は「追想五断章」を賞賛する。
残された謎は、参吾にしか分からない。

この一文は、
すぐに読み返して謎を解こうなどの愚行に読者を走らせはしない。

ただ、美しい謎の余韻に浸らせてくれる。
真実は解明する為にあるのではなく、ただ存在しているのだと思わせてくれる。

恩田陸「ユージニア」や、桜庭一樹「私の男」が好きな方は買って損はしない。

ということで、「追想五断章」美味しくいただきました。

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作者はハルキスト?プールの底に眠る。

プールの底に眠る
講談社文庫  白河三兎 著


講談社文庫にて読了。
帯の煽りは、
「超絶筆力!
切なさの魔術師!長編第一作、ついに文庫化!」


切なさの魔術師と言われたら買ってしまうだろ。
切ないの大好き、もう主人公が千々に乱れようものなら、歓喜である。
泣き咽びながら読むであろう。

内容(「BOOK」データベースより)
夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。彼女は、それでもとても美しかった。陽炎のように儚い
一週間の中で、僕は彼女に恋をする。あれから十三年…。僕は彼女の思い出をたどっている。「殺人」の罪を背負い、留置場の中で―。誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかに蘇る。第42回メフィスト賞受賞作。




タイトルでおもいっきしハルキスト呼ばわりしたが
そこまで私、村上春樹を読んでないっていうね
ただ単に、一人称とちょっとだけ不思議な設定と主人公がやたらとモテるってことと
主人公の惚れる女がちっとも可愛くないってことしか共通項見つけられず。

ひとつだけ言えるのは、
村上春樹は、途中で飽きる。
白河三兎は、最後まで読めた。

これだけである。
ま、今ドヤ顔してますけど、ちっとも褒められたものじゃない。
コアなハルキストに、鼻で笑われる。

ハルキスト云々は、それくらいにしておこう。
私としては、思ったより楽しんだ。
だがしかし、記憶には残らないだろう。


さて、ここから本編だが大いなるネタバレ記事になるので畳むことにする。

続きは以下からどうぞ。

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