愛を知る誰もが経験のある、しかし誰も観たことのないラブストーリー
愛が変化していくどうしようもない現実と だからこそ輝かしい愛が生まれる瞬間──
過去と現在が交錯し、愛の終りと誕生が重なり合う未だかつて観たことのない、新たなラブストーリーの傑作
(Amazonより抜粋)
お気に入りのライアン・ゴズリングのブルーバレンタインを筋トレしながら鑑賞。底なしの暗さ、として評判の高かった今作。
まずはあらすじ
ディーンとシンディ、この二人の夫婦についての話。
ゴズリング演じるディーンは朝から酒を飲み塗装の仕事をだらだらとしている。
しかし家族への愛情は尽きることはない。
一方、シンディは妊娠により諦めていた医療の道を努力の末取り戻し、忙しく働いている。
二人の愛娘はすくすくと育ち、7歳になる。
懸命に働くシンディはディーンの働き方がどうしようもなく怠惰に見えてしまう。
自分と同じように生き生きと仕事をして欲しい、夫にはその才能があるはずなのに
見てみぬ振りを決め込んでいることが我慢ならない。
ディーンはディーンで、手に入れた家族を守る為に努力していた。
妻を愛していたし、血の繋がらない娘にもめいいっぱいの愛情を注いで育ててきた。
なのにシンディーはどんどん離れていってしまう。
二人の夫婦がいかに出会い、いかに別れるかまでを追った物語。
七年前、運命的に出会い恋に落ちた二人
七年後、どうしようもない焦燥感に駆られ離れることしか出来なくなってしまう二人
出会って結婚するまでの過去の物語と、離婚寸前の現在の物語を交差させて
終わってしまう愛の痛さを突いた作品。
面白いのは、何があってこの二人が離れてしまうのかという「途中経過」を一切見せないこと。
だからこそ、この映画は「リアル」だと共感を生んだんだと思う。
映画的に言えば愛が壊れる理由はあって然るべきなんだけど(浮気とか借金とか諸々ある)
現実では、決定的な一大事ってことが無いのが大多数だろう。
なんで別れたの?と尋ねると
「なんでってことはないんだけど、積もり積もってかなあ。今でもお互い好きは好きなんだけどね」
とかいうことを抜かすお友達が、一人二人いるんじゃないでしょうか。
そういう方たちの共感を得ている映画でございます。
おそらく、大多数の方が妻シンディの行動が酷いという感想を持つと思われる。
けれど、それは仕方ないのだ。
監督は男。十年も練ったと言うのだから、
男の怨念が篭ってるわけで女が奇怪で性悪女になるのは致し方ない。
けれど、女性ならシンディの気持ちも分かるんではないでしょうか。
相手に非があるわけでもないのに、ふとしたことが嫌になってしまってしょうがないなど。
確かに褒められたことではないけれど、これは「あるある」なんですね。
監督も、脚本チームも噂によると、両親の離婚を経験しているとかしていないとか。
かくいう私も、両親の熟年離婚を経験している為、
この映画、刺さるところがありました。
ディーンとシンディは、何も憎みあって離れたわけではない。
それは、ディーンが激昂して投げ捨てた結婚指輪を、二人して草むらを掻き分けて探すシーンでよくよく分かります。シンディとて、ディーンを愛している。なのに、これ以上一緒にはいれない。
そういったシーンでした。
映画や小説、漫画なんかでは、恋愛関係にあるお互いの心情は、結構な割合で等しく描かれる。
けれど、この映画では「今」起こったことと「過去」に起こったことしか描かれない。
鑑賞者は、ディーンとシンディの心情を推し量るしかない。
それは即ち、己の恋愛関係或いは過去の恋愛関係を慮り補完するしかない。
彼らの心情を理解するには、己を投影するしかないという作りになっている。
例えば、シンディの心が狭いとか、ディーンが情けないとか、そういうことじゃないんだ。
これは愛する人のどこを認め愛し、どこを妥協して赦すかということを提示した映画なんじゃないかな。
それこそが愛を持続させる努力なのだと言いたかったのかもしれない。
そうやって努力していれば、愛が花火のように一瞬の美しさだけを残して消えることはない、はず。
ということで、「ブルーバレンタイン」ビターに美味しくいただきました。